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「アゴラ」としてのアートナビゲーター・イベントー“オリンピックと美術の関係性”を語り合う


まいど、アートナビゲーターのあづまっくすです。これまで美術検定ブログでは、美術を取り巻く環境として、恒例となりましたアートフェア東京みどころ速報書籍『美術展の不都合な真実』などをご紹介してきました。今回は、美術検定1級合格者であるアートナビゲーターの皆さんとのオンライン・イベントでお話をする機会を得て、2021年のオリンピック・イヤーにちなみ、一見関わりのなさそうな“オリンピックと美術の関係”をお話させていただきました。

今回は、そのサマリーを少しだけこちらでご紹介、ということで、はじまりはじまり~

 

今回のイベントはちょうど東京2020が始まった直後に開催されましたが、当日は、


 ・オープニング~2012年ロンドン

 ・オリンピックの歴史

 ・参加者の印象に残ったオリンピックの共有

 ・夏のおすすめ展覧会情報


といった流れで進行しました。


2012年ロンドン


オープニングでは、話のきっかけとして、僕が訪れた2012年ロンドンの旅について、写真を交えながらお話ししました。旅の目的は、1990年代以降英国の現代美術を牽引するアーティストの一人、ダミアン・ハーストの個展だったのですが、時期がオリンピック直後だったため、街の中に美術があふれている、そんな印象を強く受けました。

例えば、美術館・博物館が集中するエリアの目抜き通りには、現代彫刻が立ち並ぶといった大規模なものから、手に取れる大きさとしては、路線図を題材とした作品が地下鉄マップの表紙として配布されている、などなど。

一観光客として楽しみつつも、東京在住の美術ファンとして、当時決まっていた2020年東京大会ではどういった状況になるのだろう、それがオリンピックと美術の関係性に興味を持ったきっかけでした。

オリンピックでの芸術競技


調べていくうちに、オリンピックの種目として、1912年ストックホルム大会から1948年ロンドン大会まで“芸術競技”が開催されていて、日本からも数多くの芸術家が参加していたことが分かりました。またその後は、文化プログラムとして独立し、現在は前開催国の閉会式終了後から閉会式終了までを「文化オリンピック(カルチュラル・オリンピアード)」と呼び、さまざまな芸術イベントが開催されています(詳細は、アーツカウンシル東京HPの2020年「文化オリンピック」の行方を参照)。


当時の芸術競技の展示風景は、国立競技場のそばにある日本オリンピックミュージアムで、大会ごとに文化部門のデジタルアーカイブとしてみることができます。モノクロですが、堂々とした力士の彫刻が印象的でした。また芸術競技に参加した作家の一人、前川千帆の展示が、現在千葉市美術館で開催の『平木コレクションによる前川千帆展』(2021年9月20日まで)でみることができます。展示では、芸術競技に出展(出場)された版画作品《ラグビー》(1932年ロサンゼルス大会:前期展示)や《ジャンプ》(1936年ベルリン大会:後期展示)のエディションをみることができます。芸術競技では、スポーツをテーマとした作品に限られていたのも興味深いですね。


参加者のオリンピックにまつわる思い出

今回イベント参加者の方には、事前にこれまでのオリンピックで印象的だったことをお聞きし、イベントでは、オリンピックの歴史や日本オリンピックミュージアムの展示についても取り上げつつ、皆さんにお話しいただきました。

まずは開会式の感想から。1984年ロサンゼルス大会でのロケットマンや2008年北京大会での花火など、セレモニーの演出は開催国クリエイターたちの腕のみせどころ。今回、東京2020の開会式ではドローンを使うなど、時代を反映した演出も記憶に残りますね。

また、1964年東京大会や1998年長野大会の思い出として、競技を見に行くだけではなく、海外からのお客様のアテンドをされていたという自国開催ならではのエピソードも。

競技としては、フィギュアスケートなど、技術だけではなく表現に対しての評価でメダルが争われる種目があげられていて、美術を通じて様々な活動をされてきたアートナビゲーターらしい視点での思い出を伺えました。

ちなみに僕は、1976年カナダでのモントリオール大会での体操競技、ルーマニア代表のナディア・コマネチ選手の華麗な演技が、最初のオリンピック体験でした。僕は当時10歳、近所の食堂にお昼ご飯を食べに行った時、まわりの大人たちが重量挙げやレスリングを話題にしている中、口に出せなかったのが苦い思い出です…。


語りあう場=アゴラ


緊急事態宣言やまん延防止適用措置といったコロナ対策で外出に制限がかかる中、今回オンラインという形で開催されたこのアートナビゲーターイベントを、「アートナビゲーター・アゴラ」と名づけたいな、と思いました。これは、2021年7月1日から8月15日まで東京・日本橋で開催されていた『オリンピック・アゴラ』というイベントにヒントを得ています。



『古代ギリシャの街には“アゴラ”と呼ばれる公共の場がありました。活気あふれるその場所に人々は集まり、食べたり、飲んだり、歌ったり、商売をしたり、意見交換をしたりして、都市生活を楽しんでいました。』(オリンピック・アゴラのサイトより)


リアルに集まり賑やかに交流することが制限されるご時世、オンラインにおける「アゴラ」の存在、大事だと改めて感じました。参加された方からも「時事的なことを切り口に、美術と絡めていくのは楽しい」「オリンピックをテーマにアートにまつわる話!アートナビゲーターならではの話題の展開」などコメントをいただく中で、さまざまなバックグラウンドを持つアートナビゲーターの皆さんと語り合えたこと、とても刺激的でした。


一方で、「リアルで交流できる機会」を求める声もあり、長期化するコロナ禍でのコミュニケーションにはまだまだ課題も多いのは事実です。ただ、距離を気にせず参加できるオンラインの良さも生かしながら、今後も交流を重ねていきたい、そんな仲間たちがいること、その根っこに芸術があることを、改めて感じることができました。



プロフィール/

美術館でのボランティアや画廊巡りのガイドツアーといった美術の現場で、鑑賞する楽しさを伝えるアートプラクティショナー。美術作品を前にしたとき言語化できない感情をレゴブロックで表現するワークショップも開催。月1トークイベント1st Saturday Salon主催。Instagramやtwitterはぼちぼち。最近は音声SNSのCLUBHOUSEで『平日美術館アートシーン』を平日毎日20:45から放送中。



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