top of page
bijutsukenteiweb

【緊急企画】CINEMAウォッチ「こんなときには、DVDでアートを楽しもう」

更新日:2020年4月16日

こんにちは。アートナビゲーターの深津優希です。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、美術館の臨時休館が相次いでいます。2020年3月19日から開催を予定していたアートフェア東京も、中止になってしましました。換気の悪い場所や人が集まる場所を避けて、なんとなくおうちにいる時間が長くなりますね。こんなときこそ、気になりつつ見ていなかった映画を、DVDや配信で楽しむのはいかがでしょうか?

今回はイサム・ノグチとゲルハルト・リヒターの映画DVDと、それぞれに関連した展示情報(状況が落ち着いたら是非みてほしい!)をあわせてご紹介します。




彫刻家イサム・ノグチ

日系アメリカ人の彫刻家イサム・ノグチをご存じでしょうか。ランプやテーブルのデザイナーとして知っている方も多いかもしれません。詩人の野口米次郎と、編集者で教師のレオニー・ギルモアの息子として、1904年アメリカに生まれ、幼少期を日本でも過ごしますが、主な教育はアメリカで受けます。パリ留学の折には、ロダンの弟子ブランクーシに師事しています。日本からはアメリカ人扱い、アメリカからは日本人扱いで辛い経験をしますが、戦後1950年に来日し、東京のデパート(三越)で展示をしています。そのころ東京都庁や横浜美術館などを設計した丹下健三や、東京国立博物館東洋館、東京国立近代美術館などを設計した谷口吉郎、そして東京女子大学、聖路加国際病院などを設計したアントニン・レーモンドなど、名だたる建築家と親交を深めました。李香蘭こと山口淑子と結婚し、香川県高松市に住んだ場所が、イサム・ノグチ庭園美術館として公開されています。イサム・ノグチの大きな作品のひとつ、札幌市のモエレ沼公園も訪ねてみたいスポットですね。


映画「レオニー」

2010年に松井久子監督の「レオニー」という映画が公開されました。物語の主人公は母親ではありますが、その中でイサム・ノグチの幼い頃のことも描かれています。両親は文学を通してアメリカで出会い、心を通わせます。米次郎はレオニーの協力で英語の詩や小説を発表し注目を集めるも、レオニーが身ごもったとたんに帰国してしまいます。レオニーは息子を連れて日本を訪れますが、そこで母子を待っていた現実とは…。

ここに書いた物語の始まりだけですでに好感度ゼロの米次郎ですが、中村獅童がうまく演じています。エミリー・モーティマーが演じるレオニーは、心に熱さと強さを持つ人という印象でした。戦争もあり、つらい要素の多い物語ですが、イサム・ノグチの作品から感じるおおらかさ、あたたかさのようなものは、困難を乗り越えてうまれたものなのかな、と感じます。


「レオニー」予告編: https://www.youtube.com/watch?v=pljvFUaIebU


展覧会「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」

ちょうどパナソニック汐留美術館で2020年3月22日まで開催の展覧会で、ブルーノ・タウト、井上房一郎、アントニン&ノミエ・レーモンド夫妻、剣持勇、ジョージ・ナカシマ、そしてイサム・ノグチの作品を見ることができます。イサム・ノグチの《あかり》シリーズの光の彫刻がずらっと並ぶコーナーは見ごたえ十分です。こちらは美術検定応援館となっていて、美術検定の合格認定証を掲示すると100円引きです。


「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展:https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200111/

(※新型ウイルス感染拡大防止のため、2020年3月15日まで臨時休館しています。その後の開館予定については、上記のサイトにてご確認下さい)


映画「ゲルハルト・リヒター・ペインティング」

さて、以前にこのブログでもご紹介した映画「アートのお値段」の中で、美術館に収蔵されたら未来があるが、富豪に買われたらもう二度と日の目を見ないといった内容の発言が印象的だった現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒター。これに対しオークションハウスのスタッフは「美術館のほうが墓場だと思うけど」と言っていましたね。そのリヒターの絵画制作にのぞむ姿を収めたドキュメンタリー映像が「ゲルハルト・リヒター・ペインティング」でです。

フォト・ペインティングといって、自分で撮った写真や新聞・雑誌にのっている写真をもとに描き、そこにうすもやをかけたような具象画。色の重なりがテキスタイルのようにも壁のようにもみえる抽象画。並べて見せられても、同じ作家の作品とはわからないけれど、どちらもリヒターの作品です。映像では、周囲のスタッフやギャラリスト、ファンらと言葉を交わすリヒターも収められ、その中に印象に残る言葉もありました。リヒターが「理解できてしまう絵は、ダメな絵です」と話すのをきいて、そうか、わからないことは悪いことじゃないんだ、と安心しました。そして、わかろうとすることが、鑑賞することですよね。


◆「ゲルハルト・リヒター・ペインティング」DVD: http://www.ivc-tokyo.co.jp/titles/ka/a0484.html

◆CINEMAウォッチ「アートのお値段」: http://bijutsukentei.blog40.fc2.com/blog-entry-303.html


MOMATコレクション

東京国立近代美術館(MOMAT)の4階所蔵品ギャラリーのハイライト・コーナーに、リヒターの作品《シルス・マリア》が展示中です。新しく寄託されたものです。隣にはポール・セザンヌの《大きな花束》が並んでいます。先日所蔵品ガイドでこの2点を比較しながら鑑賞したのですが、どちらも写真を意識しているところが共通点だと発言された方がいました。写真に対抗して本物を写し取るように描くことに意味を感じず、絵画に何ができるか実験したセザンヌ。フォト・ペインティングのリヒター。並んでみられるこの機会に是非足をお運びください。ちなみにリヒターは自宅にこの《シリス・マリア》とクールベの風景画をかけていたそうで、2018年には国立西洋美術館で「本館 特別展示 リヒター/クールベという展示もありました。

こちらの美術館へ行ったら、忘れずにチェックしてほしいのがイサム・ノグチの《門》です。前庭を突っ切ってミュージアムショップの横の階段をあがると、近くで見上げることができますし、2階のベランダから眺めたり、4階の眺めのいい部屋から見下ろしたりすることもできます。MOTMATコレクションで一番大きな所蔵品です。数年おきに色が塗り替えられますが、前回が2011年でしたので、そろそろではないかと楽しみにしています。


東京国立近代美術館: https://www.momat.go.jp/am/

(※新型ウイルス感染拡大防止のため、2020年3月15日まで臨時休館しています。その後の開館予定については、上記のサイトにてご確認下さい)


今回は、イサム・ノグチとゲルハルト・リヒターの映画DVDと、あわせてみたい展示をご紹介しました。映画は作家や作品をよく知るきっかけになります。ぜひお楽しみくださいね。



プロフィール

美術館ガイド、ワークショップ企画、美術講座講師、執筆などを通して、アートと観る人をつなぐ活動をしています。このブログでは、アートが題材となった映画をご紹介しています。


閲覧数:427回0件のコメント

Comments


bottom of page